結核と非結核性抗酸菌の対応
今日は髪の毛を切ってきました。もともとそんなに長くないのですが、暑くて邪魔なのでばっさり行ってしまいました。あーあ、男の子みたい。色んな人に切らんでええやんってとめられたんですけどね。伸びて切って後悔、っていうのをいつも繰り返しています。
ま、どーせすぐ伸びるからいいんですけど。
さて、今日は結核とゆかいな仲間たちについてです。仲良しの友達が夏休み明けに結核治療で有名な某外病院に行くということや、ちょうど勉強会のQBの範囲が呼吸器感染症ということでこのお題について考えたいと思います。
結核 | 肺MAC症 | |
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感染経路 | 人から人へ | 環境(土や水)からうつる。 人から人にはうつらない。 |
進行の早さ | 数ヶ月単位で進行 | 数年単位で進行 |
薬 | 治療薬と使い方が 確立しており、 98%が根治可能 |
根治できる薬は まだない |
患者の特徴 | 男性が6割 | 中高年女性が多い |
出典:
http://funakoshi-naika.com/pneumology/pneumology04/
あなたは外来診療をしている医師であるとしましょう。今日は咳、痰を主訴とする患者さんがやってきました。問診によれば2か月ぐらい咳が止まらないそうです。レントゲンでも結核のような像が見られます。
国試的には典型的な結核の患者ですね。でも、非結核性抗酸菌症の症状にも一致します。ではこの患者さんに対してどのように対応すればよいのでしょうか。
最も避けなければならないことは、患者が結核菌を排菌していて院内で接触した人に感染させてしまうということです。なので、まずは結核疑いの患者が出た場合は確定診断を待たずに隔離してサージカルマスクを着用させます。医療従事者はn95マスクを着用して検査をします。もし、接触者がいるのなら、接触者検診としてIGRA(インターフェロンγ遊離検査)を行います。BCGや他の好酸菌とは異なる結核特異タンパクを利用するので、結核だけをスクリーニングできる検査ですね。欠点は活動性感染なのか過去の感染なのかが区別できないことです。あと、初期の段階で肺癌の可能性も少しは頭に入れて鑑別することも必要です。
次に喀痰塗抹検査で本当に抗酸菌に感染しているかを確認します。この時に用いるのはZiehl-Neelsen染色ですね。
その後、染色の結果に関わらず菌のDNAを検査するためにPCR検査を行います。喀痰塗抹検査陽性かつPCRで結核陽性が出たならば結核確定、即治療を開始します。喀痰塗抹検査陽性かつPCRで好酸菌陽性なら非結核性好酸菌感染症の疑いが強くなります。ただし、好酸菌は大気中や土壌中によよくいる環境常在菌なので1回の検査では確定診断をすることはできないのです。ガイドラインでは喀痰塗抹と培養検査を3回連続で行うことが推奨されています。連続で陽性になれば非結核性好酸菌感染症が確定します。
喀痰塗抹検査陰性かつPCR陰性の場合は何もない可能性が高いですが、一応培養結果と気管支鏡検査を行います。確定診断に培養結果を用いない理由は、結果が出るまでに恐ろしく時間がかかるからです。MGIT培地では7-10日、小川培地では4週間以上かかります。迅速性が求められる結核診断では待ってられへんわ!!ってなるわけですね。これらの検査で陽性なら感染疑いに逆戻り、全て陰性でやっと感染が否定されます。
結核患者は日本ではまだ多く見られます。結核を広げないためにも(あと接触者検査の手間を省くためにも)疑わしい患者は即隔離して短時間で検査してしまうことが大切ですね。仕事は減らしていかねば!