ぬーみんの日記

某大医大生の短期留学と膝のリハビリと医学メモ

治せる認知症、進行する認知症

こんにちは、手術まで2週間を切ったぬーみんです。

 

最近の膝のリハビリメニューは

  • 足軽めのスクワット150回
  • 足上げ20回×2
  • 足振り50回
  • 家の中ではサポーターなしで過ごす

って感じです。まだ右に比べて左の筋肉量は40%ぐらいらしいです。ぺらっぺらやでっ言われました。つらい・・

 

 

さて、今日は認知症についてです。

高齢社会を突き進む日本において認知症が増えていくということは必然であると考えられます。将来的には700万人が認知症になるかもという推計も・・・

どこの診療科の医師になっても認知症患者を診ることは日常となることが考えられるので理解を深めることは必須です。

認知症と一言に行っても様々なタイプがあります。一般的に認知症といえばアルツハイマー!!治らんやつ!!って思ってる人は多いと思いますが、治療可能な認知症つまり見逃してはいけない認知症も存在します。

 

鑑別アルゴリズムと特徴的な所見

step1 認知症を疑う所見、日常生活に支障をきたすか →せん妄との鑑別 

  ↓

step2 認知症を疑う(Mini-cogでスクリーニング)→↴ 

  ↓                    ↓

step3 長谷川式20点以下or MMSE23点以下→(陰性)→軽度認知障害(MCI)

    ↓

  (陽性)

step4 認知症鑑別

   (病歴、身体所見、血液検査、頭部MRI/CTなど)

   ↓               ↓

下記を除外     局所神経症状は?→(なし)[A]

   ↓          ↓

   ↓                                 (あり) [B]

   [C]

 

 

[A]

[B]

  • レビー小体型認知症:幻視、パーキンソニズム
  • 脳血管性:脳血管障害の存在、感情失禁、階段的進行(急に進行する)
  • Parkinson病に伴う認知症:安静時振戦、小刻み歩行、仮面用顔貌、嗅覚低下
[C]
  • 慢性硬膜下血腫:高齢者が数日前に飲酒し転倒、頭痛、四肢麻痺
  • 甲状腺機能低下症:便秘、うつ、嗄声、むくみ(non-pitting edema)
  • 正常圧水頭症:精神活動低下、尿失禁、歩行障害
  • うつ病:不眠、反応遅延、希死願望
  • 電解質異常(主に低Na血症):水分多飲、薬剤性

門脈圧亢進症と肝臓の解剖(後編)

長らくブログをサボっていました、ぬーみんです。

色々なことがありました。

 

まず、なんと、スクワットができるようになったんです。それにサポーターなしで歩けるようになりました!!(恐々と)

次に入院手術の日程が決まりました!先生の寛大な措置で追加クリクラがなくなりました!!やったね!あそびほうだr...、いや、ちゃんと病院見学に行ける。

あとは2冊本を読みました。1冊目はマルサスの「人口論」。食糧の生産スピードは人口の増加スピードについていくことはできない、故にどの社会でも一定数の恵まれていない階級が出来てしまうのは仕方がないって理論ですね。1700年代によくここまで考察したなーって思ったのと、地球の今の状態が続けば大飢饉がやってくるんじゃないかって思いました。

2冊目は「白い巨塔」。昔の医者ってやべーなっていうのが率直な感想ですね。ダイナミックな開腹手術のシーンはなんか興奮しました。術式や薬剤は驚くほど進歩しているのに医学教育は全く同じ内容同じ形式みたいですね、悲しいよ。パターナリズム医療の時代にICの考えを明記しているのが画期的だったんだと思います。

 

さて今回は前の続きですね。

門脈がどこで狭窄するかによって同じ門脈圧亢進でも病態や予後が大きく異なります。

肝内性

  • 前類洞性:特発性門脈圧亢進症・日本住血吸虫症・・・肝内門脈が狭窄する。門脈圧は亢進するが肝細胞自体は障害されておらず、肝動脈からの酸素供給も途絶えない(前回の解剖の図を思い出して!)。よって肝機能は保たれ予後良好
  • 類洞・後類洞性:肝硬変・・・肝細胞がウイルスやアルコールによって叩かれて瘢痕化、の過程を繰り返しているうちに肝細胞が大きくなって類洞を塞いだってイメージですかね(間違ってたら教えてーー)。肝細胞が破壊されてるわけだから肝機能障害を起こし肝不全に至ることもある。予後不良

肝外性

  • 肝前性:先天性門脈形成異常
  • 肝後性:Budd-Chiari症候群・・・肝静脈主幹部や肝部下大静脈の狭窄。原因は不明。急性発症のタイプは予後不良

こんなもんかな、あんまり書くことなかったです。

国試問題97I8のシミュレーションby Python

どーも、おひさしぶりです。ぬーみん生きてます。

今日は日ごろのことは置いといて、最近Pythonで遊んでみた成果を張り付けておきたいと思います。

 

さて、MTM先生の授業を聞いた人は見覚えあるかと思われるこの問題。

32歳の女性。遺伝相談のために来院した。父が常染色体優性遺伝疾患に罹患している。この疾患の浸透率は50%。近親婚はなく、本人は発症していない。第1子が発症する確率は? 

 この問題、私たちの世代には厳しい問題だったのではないでしょうか。なんせ条件付確率が高校数学の範囲外だったもんで。

この問題の解き方

病的遺伝子A、正常遺伝子a、浸透率αとする。父親の遺伝子(Aa)、母親の遺伝子(aa)であると考えると

  • 相談者が病的遺伝子を保有している確率は1/2
  • 相談者が病的遺伝子を保有しており、かつ病気を発症していない確率(P)は1/2 * (1 - α) = 1/4
  • 相談者が病的遺伝子を保有しておらず、もちろん発症していない確率(Q)は1/2

このことを踏まえると「相談者が発症していないときに病的遺伝子を持っている確率」はP/(P + Q) = (1/4) / (3/4) = 1/3

この相談者を母親、病的遺伝子を持たない男性を父親として生まれた子供が病気を発症する確率は1/3 * 1/2 * α = 1/12 ≒ 0.084...

 

 

・・・でもなんか直感的に騙された気がするなぁ。

ってことでシミュレーションしてみました。

 

marry.py

f:id:numin-yumin:20171011232604p:plain

kokushi97_I_8.py

f:id:numin-yumin:20171011232744p:plain

 病気を発症している父親と健常人の母親が1000回相談者を産んだとしてその子供が病気を発症する確立を計算して、100回試行分を平均した数値が返ってきます。

Runしたところ見事に8.4%付近の結果が出ました。

以上Python による自習(暇つぶし)でした。

頑固じーさんの余命告知、ホスピス転院、緩和治療

こんにちは、ぬーみんです。今日は心にダメージを食らって頭の中にしこりを残した日でした。最後の最後で患者さんのご家族さんとのIC(患者さん抜き)、死を受け入れてもらいつつホスピスへの転院を促す内容のICに同席しました。

 

患者さんは頑固なじーさんで、7年前にガンAを発症、6年前にガンAを別の部位で再発、去年ガンBを発症した方です。すべて某大病院で化学放射線療法で治療されて寛解まで持ち込んでいます。ガンAは日本人には珍しいがんで平均予後は2~3年といわれておりガンBも進行した状態で見つかったので、何度も死の淵を乗り越えた方ということになります。いろいろな職に就きながら70才を超えてからもお仕事を続けてこられて、ガンBが発見されるまでずっと仕事をされていたそうです。今は禁煙されていますが昔はキチガイみたいに煙草を吸っていたそうです。

 

じーさんは実習4クール目の月曜日に急激に進む呼吸困難を主訴に緊急入院となった方です。原因は右肺の胸水で、ドレーンを留置して3L程抜いてあげるとかなり楽になったようです。このころはまだまだ元気で、移動には看護師が付き添うことになっていたのです(酸素吸入の必要があったため)が面倒だからと勝手にウロウロしたり、面倒だからCOPDの吸入薬を勝手にやめたりと看護師さんを困らせていました。

胸水の鑑別は困難を極めました。可能性としては

  • ガンAの再発
  • ガンBの再発
  • 新しいガンCの出現

がありました。ガンAの主治医の先生に鑑別をお願いしたのですが、典型的なタイプとは違うので時間をくれと言われました。その間、じーさんとは色々な話をしました。動脈閉塞症と診断されたのに煙草をやめられなかった話、甥が某大の法学部にいる話、お仕事の話、野菜が嫌いなこと、つい2か月前まで元気にゴルフをしていた話、入院直前も車で来たこと、昔のガンのこと。治っても仕事をしないなら楽しみなんてないってことも。

 

転機が訪れたのは実習4週目。SpO₂の変化はないのに呼吸困難が増強して夜も眠れないとの訴えがありました。あんなに元気だったじーさんはげっそりと頬がこけてご飯がほとんど食べられなくなっており、苦しさのあまり座っていても前傾姿勢しか取れず、胸壁の一部が膨隆し痛がっている様子でした。

また病理の最終結果も出ました。結果はガンAの再再発。全身状態としては1日の半分をベッド上で過ごしている(PS:3)状態の上にガンAの薬剤感受性が低いことから、抗がん剤治療はできないと診断されました。そして余命は2~3か月。半年後の金婚式までは持たないだろう、と。治療方針としては胸水コントロールのメドがついたら慢性期病院かホスピスに転院するいうことに決定しました。

 

この時ご家族には余命や具体的な病状について説明済みだったのですが、じーさん本人は聞きたがらなかったので何も言っていなかったそうです。ご家族さんの話だとじーさんは某大でなら今回も回復すると信じて、食欲がないのにごはんを無理やり食べて腎臓を悪くしないように鎮痛剤を極力飲まず痛みに耐えていたそうです。

 

ここで医療者として患者さん本人に医学的に正しいことを伝えるとしたら、ゆったりとしたホスピスで痛みをとったり呼吸困難を和らげる緩和ケアを受けつつ家族と最後の時間を過ごすのがいいですよ。専門の医師看護師が24h対応してくれるし面会時間や外出の規則もゆるくてより好きなことができますよ。病状が悪くなってから余命を伝えるのは今伝えるよりもはるかに精神に大きなダメージを与えるし、何よりこれ以上タイミングが遅れると移動できなくなりますよって感じですね。(某大病院は急性期病院なので回転率を上げるためにも出ていただかないと困ります)

でも、じーさんにとって某大を出ていくことは即ち死を意味するのです。今まで大学から転院せずに回復してきたのですから。今日のご家族さんと話し合いでは、今じーさんにすべてを話しても生きる希望を奪われながら死んでいくことになる、人生でやり残したことは特になさそうだからもう少し待ってもらえないかといわれました。じーさんはまだ治療することを諦めていないのです。

医学的に正しいことと患者さんにとって最良のことは違うのです。

 

今日撮ったCTではここ3週間で腫瘍がかなり増大し右主気管支が狭窄、右上肺野が閉塞性肺炎からの気胸、胸壁への浸潤(いわゆる’ガンの花’の前駆状態のようなもの)が見られました。もう命の限界は近づいているようです。

 

1か月同じ患者さんを診ていると元気になる様子も弱っていく様子もすべて見ることが出来ました。苦しんでいる患者さんを目の前にした時に何とかしたいと思ったその気持ちをいつまでも忘れないようにしたいと思います。年内にじーさんはきっと亡くなるだろうけど何もできない学生の自分にもありがとうって言ってくれたじーさんのこと、じーさんが大変な時に自分のひざのことを心配してくれたご家族さんのこと、このクールで感じたリアルを忘れないようにここに記事にします。

この記事がじーさんの生きた証になりますように。

 

 

門脈圧亢進と肝臓の解剖(前編)

こんにちは、ぬーみんです。

リハビリでも外来でも筋力低下をdisられ続けてはや1か月。最近は自重トレーニングに加えて電気刺激を利用したトレーニングを取り入れてもらっています(通称電気びりびり療法)。大腿四頭筋のうちの内側広筋に力が入らないので電気刺激で内側広筋を認識しながら自分でも力を入れてトレーニングするというものです。伸筋群はすぐに筋力低下してしまうって習ったんですが、自分の体で絶賛納得中です。

 

全く話は変わりますが毎日聞いている「ザ・ボイス そこまで言うか!」の昨日の回がとても面白かったのでのっけておきます。

2017/09/27(水) ザ・ボイス モーリー・ロバートソン ニュース解説「明日、衆議院解散へ」「トランプ大統領、北朝鮮への軍事行動 "準備整っている"と警告」など - YouTube

モーリーが来るだけで番組がカオスになるというのか何というのか。私が特に気になったのは

  • 小池新党、強力な吸着力を持った烏合の衆が野党を飲み込む
  • 北朝鮮の道路は9割舗装されていない。核とICBMはあるのに電力不足やインフラ不足は深刻。アメリカとのチキンレースでは意外と守りの面での脆弱さを割らしているのではないか
  • 海外特派員ニュースでは手早くニュースをまとめるために声の大きい人、有名な人が取り上げられがち。それが日本に逆輸入されて間違った情報が増幅されたことが過去にはあった。総選挙のネタとしてコンビニエンスに原発0を掲げるとまたおかしな情報が海外に流れて、せっかく東北産農産物の海外向け輸入が解禁になったのに水を差すことにつながるかもしれない
  • 主にラストベルト(アメリカの没落した工業地帯)の貧しい白人層がまともな医療を受けられず、とりあえずで処方された麻薬性鎮痛剤フェンタニルで中毒を起こしている(日本ではフェンタニルは病院内の金庫で厳重に保管されてるのに!!)一方中国では欧米の医療用麻薬解禁を見越して、医療大麻の開発を官民で行って特許取得も進めている。さらに合成麻薬や医療用麻薬の原料も輸出している。中国やばくね⁉
  • クルド人独立の混乱で得をするのはイスラエル

って感じです。あーー、長くなってもた

 

さて、今日の本題は門脈圧亢進症についてです。

まず肝臓のミクロの解剖です。

 六角形の中心が下大静脈に集合する中心静脈、頂点が三つ組み(門脈、肝動脈、小葉間胆管)です。すっかり忘れていました。で、類洞とは肝臓の中で門脈と中心静脈をつなぎ肝細胞と血管内の物質交換を行う役割を担っています。類洞には肝動脈も流れ込んでいます。

門脈圧亢進はこのうちの門脈、類洞、中心静脈、肝静脈のどれかの圧が亢進することで起こります。門脈圧は正常で100mmH2Oですが、200mmH2O以上に上昇したものを門脈圧亢進と言います。

門脈圧亢進で起こることは

  • 腹水:類洞圧の上昇や肝機能障害の低アルブミン血症による
  • 汎血球減少:門脈がうっ滞することにより脾静脈の血流もうっ滞し、脾血流が増加する。それによって脾機能が亢進して血球破壊が亢進し汎血球減少が起こります。

splenomegaly

 

  • 肝機能障害
  • 肝性脳症:人体にとって有害なアンモニアや芳香族アミノ酸が、肝機能障害によって肝臓で分解されることなく脳に直接行きます。そしてダメージを食らいます。ちなみに肝性脳症といえば羽ばた振戦ですが、あれは下の②の図のような「上肢を伸展させて手を背屈させる」ポーズを維持することができず、掌屈と背屈を繰り返すのが羽ばたくように見える事から名づけられました

「羽ばたき振戦」の画像検索結果

 

  • 胃食道動静脈瘤・痔核・メデュサの頭:側副血行路の形成がおこります。胃食道静脈瘤はとくに大出血を起こす可能性があるので危険です。

portal-hypertension-002

関係ないことを書きすぎて長くなったので次回に続きます。

出典:

【保存版】門脈圧亢進とは?原因、症状、治療のまとめ! | 医師が教える人間ドックの評判とホントのところ

尿崩症の鑑別

こんにちは、ぬーみんです。まずはご報告から。

ついに手術日程が決まりました!!10/31です。というわけで「血の西医体と恐怖のハロウィン」が実現する予定です。わーーい(棒読み)。

ちなみに勉強不足で国試に落ちることをMTM先生は「血のバレンタインデーと恐怖のホワイトデーがダブルでやってくる」とがおっしゃっています。

今週の診察では順調に経過しているので、明日からもっと普通に足をあげて歩くことや階段の上りをやってみるように、ともアドバイスされました。

入院しながら病院実習できるかなって整形外科で看護師をしている同級生に聞いてみたら

「無理。患者様は安静にしてください。」

って即答されました。いや、抜け出してでも行くわ、追ポリ減らしたいし。

 

 

さてしょうもない報告は置いといて、今日は尿崩症についてです。勉強会の範囲でQB内分泌を解き進めていたんですが、ここの範囲はめちゃムズでした。

 

尿崩症とは低調尿(比重1.010以下)が大量に出る(3L/day以上)疾患で口渇、多飲を伴います。が、多尿を示す疾患は鑑別が必要です。さらに尿崩症の原因によって治療が変わるため尿崩症の中でも鑑別する必要があります。

今回は多尿の患者さんの鑑別をしていきましょう。

 

①高張尿?低調尿? ➡ 尿検査、血液検査、病歴

低調尿の基準は

  • 尿比重1.010以下
  • 尿浸透圧300mOsm/kg未満
  • 尿浸透圧<血漿浸透圧

があります。ここで等~高張尿であれば浸透圧利尿をきたしているということなので、腎不全や糖尿病を疑う必要があります。逆に低調尿ならば尿崩症の鑑別に進みます。

 

 

②適切な刺激で尿は濃縮する? ➡ 高張食塩水負荷試験、水制限試験

ADH分泌能が正常で受容体も正常ならば、体内の水分を減らすか塩分を上げればちゃんと尿から水を再吸収してくれるんじゃないって発想です。この試験では心因性多飲と尿崩症を鑑別できます。

心因性多飲

精神疾患やストレスが視床下部の口渇中枢を刺激することでどんどん水を飲んでしまいます。「飲むから出る」タイプですね。あと、問診で鑑別するならば「夜間尿は少ない」ということでもわかります。

 

  • 高張食塩水負荷試験・・5%食塩水を静注して血中AVP値が上昇するか
  • 水制限試験・・体重が3%減少するまで水分を摂取しないで血漿浸透圧や尿浸透圧に変化があるか  ※苦痛を伴う試験なので必要な場合のみ実施する

 

 

AVP受容体は働いてる? ➡ バソプレシン試験

受容体のほうがだめならホルモンを補充しても反応なし、ホルモンが出ていないなら補充すれば正常反応を示すはずっていう発想です。こっちは「出るから飲む」ってタイプですね。この試験で中枢性と腎性を鑑別できます。

中枢性尿崩症

視床下部・下垂体後葉でのADH合成・分泌能低下により尿の濃縮能が低下する。

  • 原因・・特発性(40%)、家族性、脳腫瘍(頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍)、肉芽腫性病変(サルコイドーシス)、炎症(リンパ球性漏斗下垂体後葉炎、脳脊髄炎)、外傷性
  • 治療・・酢酸デスモプレシン(DDAVP)の投与。水中毒に注意(体重、血清Naをモニタリング)
腎性尿崩症

腎臓のAVP反応性が低下するため尿の濃縮能が低下する・

  • 原因・・腎疾患(アミロイド腎)、高Ca低K、薬剤性(リチウム製剤)
  • 治療・・サイアザイド系利尿薬(遠位尿細管のNa-Clチャネル阻害でNa利尿→最大希釈力の低下・細胞外体液量とGFRの低下、尿量の減少→全体の尿量の減少)

 

  • バソプレシン試験・・酢酸デスモプレシンを投与して血漿浸透圧・尿浸透圧に変化があるか

 

サイアザイドの機序は難しいですね。あと水制限試験は絶対にしたくないです。無理です。ほんまに。

 

悪性腫瘍と意識障害

こんにちは、最近松葉杖なしでウロウロしているぬーみんです。そうなんです、杖がなくても歩けるように(歩いても怖くなく)なりました。可動域もほぼ完全に健側の右足と同じぐらいまで回復しました。でも筋力はまだまだなので電気ビリビリ療法をしたりマッサージをしてもらっています。あと滑らかに動かすこともできないのでそこも課題ですね。(まだ恐怖心があるせいだと思います)

 

さて、今日はガン患者が意識を失った!?っていうときに思い浮かべるポイントについてです。

 

救急外来での意識障害の鑑別はずばり、AIUEOTIPSです。

A :Alcohol (急性アルコール中毒

I :Insulin (低血糖DKA、HHS)、Infection(脳炎髄膜炎など)

U:Uremia(尿毒症)  

E:Encephalopathy (脳症)、Electrolytes (電解質異常)、Endocrine (内分泌) 

O:Oxygen (低酸素、CO中毒、シアン中毒)、 Overdose (薬物中毒) 

T:Trauma(頭部外傷)、Temperature (低体温・高体温)

P:Psychiatric(精神疾患)、Porphyria(ポルフィリア)

S Stroke/SAH、Shock(ショック)、Seizure(痙攣)

こんなにたくさんあります。が、ガン患者で中毒、外傷などが否定される場合最も注目すべき項目は「電解質異常」です。

 

悪性腫瘍に合併しやすく、かつ意識障害を起こす可能性のあるものは高Ca血症と低Na血症と腫瘍崩壊症候群です。国試でも臨床問題の出題が見られます。

 

出典:https://www.slideshare.net/kensyuicom/ss-28088150

 

 

高Ca血症

悪性腫瘍では経過中にしばしば高カルシウム血症を合併し,時にはこの高カルシウム血症が直接死因となることさえあります。進行癌では比較的多い合併症で、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は機序の面から以下の二つに分類されています。

  • 悪性体液性高カルシウム血症・・・PTH低値、PTH-related protein (PTHrP)高値となるもの。腫瘍細胞がPTHに似た物質(PTHrP)を放出することが原因

  例)肺扁平上皮癌、乳癌、泌尿生殖器系腫瘍、成人T細胞白血病

 

  • 骨転移・・・転移に伴って広範に骨破壊が起きることによる高Ca血症

  例)肺がん、乳癌、多発性骨髄腫

 

 

症状

軽度の場合は無症状ですが、12~13㎎/dlになると主に倦怠感、疲労感、食欲不振など否定形的な症状が出現、さらに高度になると中枢神経症状(イライラ感、筋力低下、昏睡)、消化器症状(悪心、嘔吐)、腎障害が出現します。悪性腫瘍に合併すると見逃されやすいのが現実ですが、ほかの疾患に比べて急速にCa濃度が上昇する特徴があります。脱水・腎機能不全などによる悪循環が加わって数日間のうちにカルシウム濃度が倍以上に上昇することもります。また低Alb血症を合併している場合は必ずCa濃度の補正も行うことが大切です。

 

治療

 原疾患の治療と同時に腎機能の低下、脱水症状、骨吸収亢進に対する治療が必要です。

  • 脱水・腎機能・・・生理食塩水+利尿薬
  • 骨吸収・・・ビスフォスフォネート

 

出典:http://square.umin.ac.jp/endocrine/ippan/03_disease/04_09.html

 

ちなみに高Caと低Caの神経症状、ややこしいですよね。わたしはこう覚えています。

「Caは多いほど意識は下がる」

高Ca・・意識障害、筋力低下、倦怠感

低Ca・・しびれ、テタニー、腱反射亢進

 

低Na血症(SIADH)

SIADHは、担がん患者に起こる低ナトリウム血症の最も頻度の高い原因であり、約30%を占め、担がん患者全体の1-2%に認められます。こちらも機序の面から三つに分類することができます。

  • 下垂体後葉からの分泌増加・・・腫瘍が迷走神経を障害しADH分泌抑制を解除する場合や、増大した腫瘍が下大静脈などを圧迫することで左心房容積受容体を介してのADH分泌が刺激される
  • 異所性ADH産生腫瘍・・・80%が肺がん。そのほとんどを小細胞がんが占める
  • 薬剤性・・・ビンクリスチンやシクロホスファミドなどの抗がん剤
症状

緩徐進行例の場合120mEq/L以上なら無症状の場合が多いです。進行すると悪心・食欲低下に加え、転倒、歩行失調、注意力低下画が出現します。110mEq/L以下になると意識障害やけいれん、場合によっては呼吸停止や不可逆的脳障害を起こすこともあります。また急速に進む場合は120mEq/L以上でも症状が出る場合もあります。

 

ちなみにSIADHでは低Naは起こしますが、尿量の増加は起こしにくいです。RAA系の抑制やANPによってNa利尿を起こして水分を尿として排出するからです(さらに低Naが加速しますが)。よって浮腫・腹水・胸水は起こしにくいです。

 

治療

原因によって大きく異なります。

  • 薬剤性SIADH・・薬剤の中止
  • 異所性ADH産生腫瘍・・モザバプタン(V₂受容体拮抗薬)

ですが、SIADHによる低Na血症の基本的な治療は

  • 軽症・・水制限+食塩投与
  • 重症・・利尿薬(フロセミド)+高張食塩水(3%NaCl)

です。またデメクロサイクリン(テトラサイクリン系抗菌薬)も腎集合尿細管細胞内におけるcAMP産生を阻害するため、ADHに拮抗して治療効果が得られるそうです。

 

出典:http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/canceruptodate/utd/201310/533663.html

 

 

腫瘍崩壊症候群(高K、高尿酸、高P、低Ca血症)

腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome: TLS)は、急速に増殖し、化学療法に感受性が高く、腫瘍量の多い腫瘍の治療に伴って起こりやすい、オンコロジック・エマージェンシーのひとつです。腫瘍崩壊に伴って、大量のカリウムやリン、核酸が血液中に放出されることが原因となり、腎尿細管に尿酸やリン酸カルシウムが沈着することによって急性腎不全を引き起こします。

腫瘍崩壊症候群は高悪性度リンパ腫(特にバーキットリンパ腫)や急性リンパ球性白血病の化学療法開始後に起こりやすいです。

つまり、大量のガン細胞を一気に抗がん剤で叩き潰したら中身のK、P、核酸が出てきた!ってことですね。

 

症状

けいれん、不整脈/突然死、急性腎不全(Crが正常の1.5倍以上)

 

治療

起きたらヤバいのでまずは起こさないように予防することが第一です。

  • 予防・・補液アロプリノール(事前のリスク判断によって若干変わりますが、とにかく尿酸、イオンの濃縮を防ぎます)
  • モニタリング・・尿酸PKCrCaLDH水分のin-outバランスのモニタリング。
  • 発症したら・・各種電解質異常や急性腎不全に対する治療、ラスブリカーゼ、ループ利尿薬や補液で尿酸結晶を洗い流す。必要があれば血液透析を適切に行う。

 

出典:http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/canceruptodate/utd/201310/533642.html