医師なら見逃せない、小児科救急5つ
あ、救急部門にしんどそうな小児患者が現れた!!
自分は専門外だから正直見たくないのだが・・
なんてことを不安そうなお母さんに言うわけにもいかず・・
仕方がないから見るしかない・・・
見逃したら危ない疾患だけは見ておこう・・
って流れになりそうですね。
子供は大人と違って訴えが不明瞭な場合が多いので身体所見やバイタル、保護者から見てどうかという視点から緊急度を判断していくことになります。
今回の記事は見逃し厳禁の疾患とその小児特有の主訴という観点で書きたいと思います
見逃すとヤバい疾患のポイントは?
1.脱水
小児は成人よりも脱水に陥りやすいです。
主訴としては何となくぐったりとしていると母親が訴えることでしょうか。
入院が必要性は脱水の重症度と予想されるIN/OUTバランス、経口摂取の可否で判断します。
尿が出ていない、不機嫌なのに涙が出ていない、目が落ちくぼんでいるなどは重症判定で即入院です。
また重症でなくても経口摂取が出来ず、下痢嘔吐が続けば入院の適応になります。
逆に中等度でも経口摂取が可能でIN>OUTの見込みがあれば外来でもフォロー可能です。
軽症であれば家に帰っても大丈夫です。
ちなみに小児のルートキープは難しいので安易に点滴するとは言ってはいけないそうです。看護師さんにもご家族さんにも嫌われます。
2.肺炎
咳や呼吸困難以外に、肺の炎症が腹膜に及んで「腹痛」が主訴となる場合があります。
肺炎の除外のために熱がある患者には聴診をする必要があります。聴診ではcoarse cracles が聴取されるでしょう。
3.髄膜炎
「頭痛 + 発熱」を見たら髄膜炎を疑えということはよく言われます。
仰向けに寝かせて首を起こそうとすると痛がって首が曲がらない所見は有名ですね。
言葉をしゃべるようになった子供は頭が痛いと訴えます。
大泉門の閉じていない赤ちゃんであれば大泉門が膨隆します。
その他、「子供の足もとにおもちゃを置いても下を向かない」という所見があります。
首を曲げると頭が痛くなるので下を向かない、つまり髄膜刺激症状ですね。
ただし1歳未満では項部硬直をとっても、ベテラン小児科医で感度が75%程度といわれ
ているのであてにならないこともあります。
疑った時点で広域抗菌薬とCTからの髄液穿刺が必要になります。
髄膜炎の鑑別疾患としては熱性けいれんがありますが、それはまた別の機会に・・・
4.虫垂炎
小児の腹痛では常に「虫垂炎を否定できるか」が重要!!胃腸炎と診断した時点で負けです。
完全に否定できるまでは急性腹症疑いでアプローチする方が無難なようです。
「みぞおちが痛かったのに、右下腹部の痛みに変わってきた!!」
というのが典型的な経過ですが、子供の場合は正確に痛みを訴えてくれるとは限りません。
さらに発症してから虫垂が穿孔するまでが短いので緊急疾患、見逃すと大変です。
ある程度元気のある子ならジャンプさせると右下腹部の痛みを誘発することができるそうです。
ちなみに虫垂穿孔した場合は腸管壁の進展による内臓痛が消失し、代わりに内容物がダグラス窩に流入し直腸を刺激して下痢になることがあります。
5.腸重積
生後半年~2歳で好発します。
15~20分おきに激しい腹痛を訴えて泣きますが、痛みと痛みの間はケロッとしている場合が多いそうです。
ケロッとしている間は小児外科の先生でもわからないとか・・
確実なのは両親から見て普段と痛がり方が何となく違う、という訴えのようです。
疑ったら血便かどうかを見て、エコーでターゲットサインを確認します。
嘔吐いているのに下痢便が出ない、という所見も怪しいです。
こんな時は浣腸して血便かどうかを確認しましょう。
1回でも嘔吐があればうんこを見る、が鉄則です。
この記事のまとめ
子供は大人とは異なる訴え方をし、異なる所見を取ることがある!!
参考記事
医学書院/週刊医学界新聞(第2821号 2009年03月09日)
医学書院/週刊医学界新聞(第2850号 2009年10月12日)
下2つに医学書院の連載は大変勉強になります。おすすめです!!