ぬーみんの日記

某大医大生の短期留学と膝のリハビリと医学メモ

絞扼イレウス疑いだけど・・・

こんにちは、ぬーみんです。早いもので今年もあと2週間ほどですね。

今年は良くも悪くも激動と試練の1年でした。来年こそは幸せで充実した1年にしたいところです。

 

さて、今回は血液検査と消化器疾患についての話題です。

 

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ある日、研修医として当直をしていると救急患者が運ばれてきました。腹痛、吐き気、腹部膨満を訴えています。排ガスはなく聴診では金属音を認めます。

 

まあ、たぶんイレウスですよね。

イレウスの場合最も重要なのは「絞扼性か単純性かの鑑別」です。絞扼性ならば腸管虚血、穿孔からの腹膜炎を防ぐために、緊急手術で壊死部を切除しなければ予後に関わる可能性があるからです。

このような場合、基本的に造影CTを用いて腸管虚血、閉塞部位、穿孔の有無を確認するそうです。

 

さあ、この患者さんも造影CTを撮って診断をしよう!!と思ったところ、先に行っていた血液検査の結果から腎機能が非常に悪いことがわかりました。造影できんやーーん!

腎機能の悪い人は原則ヨード造影剤は禁忌でしたね。実臨床では造影したい人に限って腎機能が悪いなんてことがよくあるそうです。(まあ、ほんまに緊急の時は透析導入覚悟で造影して処置後に大量輸液をするなんて手段もあるそうですが・・・)

 

となると、血液検査と全身状態から判断するしかなくなりました。とほほ😢

 

 

自分の1年数か月後の姿でしょうか、考えたくない・・

残念ながら造影はできませんが血液検査からでもある程度推測することはできます。

この患者さんの場合、評価すべき症状と血液検査で注目する値は次のものです。

  • 炎症:CRPWBC好中球数(WBC×好中球割合)
  • 脱水:Hb、Cr、BUN
  • 絞扼、壊死:LDH、CK、乳酸

炎症はCRPWBCってのは定石ですが、意外と見落としがちなのは好中球数。好中球増加があれば強い炎症が起きていることに確信を持てるでしょう。

 

脱水は嘔吐や腸管内に液体が貯留していることが原因で脱水になります。脱水といえばBUNとCrの比が有名ですが、勘違いしがちなのがHbです。

ヤバレジ(もしくは5回生のぬーみん)「Hbが14~15あるから貧血がないし、消化管からの出血は大丈夫なんじゃないですか~」

先生「ばっかもーん!Hbが15もあったら脱水の農縮による上昇を考えんかーい。輸液や、輸液!!」

そのとおりでございます。穿孔と消化管出血はまた別物です。

 

LDHやCKですが、この二つは細胞内の物質と考えれば血液に大量に出現するということは細胞(=筋肉)が壊されている、と判断することができますね。(逸脱酵素が上昇しているということは何らかの異常が起きていると思って間違いないでしょう)

 

最後に何よりも患者さんの様子やバイタルサインを見ることも大事です。

  • 腹部板状硬
  • 意識レベルの低下
  • 発熱
  • ショックバイタル
  • アシドーシス

このような症状があれば敗血症に移行していることが示唆されるので悠長に鑑別している暇なんてありません。即時、上の先生をたたき起こしに行かないといけないんじゃないでしょうか。

 

治療としては、絞扼性イレウスならば緊急開腹手術です。絞扼はなく保存的に治療する場合は輸液、絶食、イレウスです。(ただしイレウス管は鼻からつっこんでいてとても苦しいので1週間で決着をつけることが望ましいそうです。)