ぬーみんの日記

某大医大生の短期留学と膝のリハビリと医学メモ

透析ができないときに急性腎不全患者が来たら・・

人間が生きている、とは何なのでしょう。

ICU実習で出会った患者さんたちは、それはもう考えられない程重症な人たちばかりです。

亡くなった人、重篤な後遺症が残っている人、心停止を起こした子供、たくさん見ました。(あんまり詳しく書くのはよくないか)

そして、今日も最重症の患者さんが家族に看取られながら亡くなったそうです。私はその時には立ち合いませんでしたが。

DNR(Do Not resuscitate)、つまりこれ以上の蘇生を望まないという同意を家族から得たので、PCPSが詰まるまでの命となりました。

ただ、この人は死んではいないけど生きてもいないんじゃないかって疑問に思いました。患者さんはこんな最後を望んでいたのかなって。鎮静を0にしてもGCS2で左足を切断し気胸修復の大手術を行って、カテコラミンを使って収縮期血圧を70をかろうじて保っていた状態です。まあ、家族さんに最後に合わせるためには死なしてはいけないのでしょうね。最後に患者さんを見たときは血圧49/46、心電図波形はペーシングにかろうじて反応しているがほぼ停止、血中乳酸200越え、なんて見たこともない数字でした。もちろん顔色も土気色で死にゆく人の顔色なんだなって。

家族さんが最後の面会をしているのを遠目で見ているとなんだか切ない気分になりました。将来、こういう人たちと向かい合っていくんですね・・・

 

さてさて、今日のお話。研修医で当直している時に重症急性腎不全の患者が運ばれてきました。深夜なので透析室は開いていませんから透析はできません。患者さんは呼吸が苦しいと訴えています。心電図上、不整脈も出ています。採血してみるととんでもない検査結果です。さあどうする??

まずは腎前性、腎性、腎後性ってのを鑑別しないといけないんですが、これはまたの機会に・・・今回は腎性とわかっていると仮定しましょう。

腎不全患者で緊急に対処しなければいけないのは①尿が出せないことが原因の溢水、②高K血症、③アシドーシスです。

 

①尿が出ないので利尿薬は無効です。溢水で問題になるのは肺水腫による呼吸困難です。この場合、人工呼吸でPEEP(呼気終末陽圧)をかけて肺胞を広げてあげれば改善される可能性があります。

 

②高K血症ではまず致死的不整脈を起こさないことを目標にします。とりあえず心臓を落ち着かせるためにグルコン酸カルシウムを投与します。これにはKを下げる効果はありませんが時間稼ぎにはなります。次にインスリンとグルコースを投与します。インスリン効果でグルコースが細胞に取り込まれるときにKも一緒に取り込まれるので血中濃度を下げることができます。

 

③アシドーシスに対してはメイロン(NaHCO3)を使います。この時できれば経口投与のほうが望ましいようです。静注は国試では禁忌になっていたような気がします。緊急時はいいのかもしれませんが・・とにかくHCO3で中和させます。

 

ここまでできればピンチを乗り越えられます。しかし、最も大事なのは”緊急で透析を行ってくれる病院を探すこと”です。上の3つの処置はただの時間稼ぎでしかありません。転院先を探すまでが当直医の仕事です。たぶん。

輸液の種類

ICUで心停止の患者が出ました。

即座にICUの先生が胸骨圧迫とバッグマスク換気をはじめて、その後すぐに心外の先生たちやってきてが体外循環の用意を始めて。あっという間にオペ室の看護師さんとか麻酔科の先生とか主科の先生も集まって蘇生は無事成功、緊急手術に出棟していきました。

見事なチームプレーと冷静さに感動しました。
自分も冷静にこういう人たちを助けられる医師になりたいって心底思いました。いや、本当に!!

先生たちいわく、「まあ、こうなると思ってたわ~笑」らしいけど。そこまで予見してICUに入れてたのか…


さて、輸液はどうやって選ぶのか…
輸液の目的は主に①水分と栄養補給、②循環血漿量の維持。

①補充するものは細胞内外の成分と栄養です。

このときによく使われるのが3号液、もしくは維持液と呼ばれるものです。
生食を5%ブドウ糖で1/3にうすめたものであるとよく言われます。
特徴は一日で失われる電解質(KやNa,Cl)のバランスを再現している点、一日に必要なビタミンやミネラルも含まれている点です。
まあ言ってみればご飯の代わりです。もちろん全カロリーは補えませんが。

②出血等ショック時や手術、消化液喪失のときです。

補充する成分は細胞外液に近いものです。
出血量の少ない時から順に
生食or1号液→リンゲル液→HES入り→アルブミン製剤
が選ばれます。

生食は0.9%NaCl(とっても安価!!)。1号液は生食を5%ブドウ糖液で半分に薄めたもので開始液と
もいわれます。この二つの輸液の特徴は"Kフリー"であること。救急で運ばれてきた病態不明の患者にはファーストチョイスです。
リンゲル液は細胞外液と同等の成分でできています。実はスポドリはリンゲル液の成分を参考にして作られたそうです。上2つとは異なりKやCaが含まれています。

HES入り輸液のHESとはヒドロキシエチルデンプンのことで膠質浸透圧を高めるための物質です。そのためこの輸液は代替血漿薬と言われます。
それでも血漿浸透圧を維持できなければアルブミン製剤を投与します。ただしネフローゼ症候群のように腎臓がざるになっている病態では投与禁忌です。


ちなみに細胞内液の喪失分も考慮して出血の3倍の量を輸液しないといけないそうです(細胞外液、細胞内液は体重のそれぞれ20%と40%)


www.gebaeiyouclub.com

このサイトがわかりやすいって思いました。

www.slideshare.net

このスライド、神!!ここまでしっかりまとめれるようになりたい。
が、今日のところは先生におしえてもらったことだけまとめてみた。今の段階ではこれぐらいわかれば恥ずかしい思いはしなくて済むかな・・


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成分はだいたい言えるほうがいいかな。特に生食とリンゲルのNa濃度は言えないと恥ずかしい。

アウトプットは難しい・・・

PDAで足背動脈からもAラインを取る理由

どうやら先天性心疾患のある赤ちゃんって睫毛がふぁさーーってしてるらしいですね。ICUの先生が言ってました。なんでなんやろー


さて、PDAで足背動脈からもAラインを取る理由について。

PDA(動脈管開存症)とは、出生時になんらかの理由で大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が閉じない疾患です。

動脈管は右心に還ってきた血を肺の手前で大動脈へバイパスするルートです。胎児期は肺が未熟で、胎盤から酸素が供給されるため血液を送る必要がありませんから。
ても、生まれて自分の肺で酸素を取り込むようになれば肺に血流は必要です。動脈管があれば動脈血と静脈血が混ざるので酸素化効率が下がります。
というわけでふつうは出生後48時間までには閉じる…はずです。

PDAでは高圧系の大動脈から低圧系の肺動脈に血流が流れるため肺血流が増えます。極細い動脈管なら無症状のこともありますが、太ければ肺血流が増えすぎて、右心系に負担がかかります。長期間放置すれば右心不全などの症状が出てきます。

PDA単体であればカテーテルでのコイル塞栓術で治療できます。ただPDAは他の心疾患(例えば単心室)を合併していることが多いのです…

そんな子は、まずは肺血流と体血流を調整する手術をします。その時に動脈管をいじることがよくあります。

で、なんでAラインを足でもとるか。実は動脈管があまりに太いと下行大動脈とまちがえることがあるそうです。間違えて切ってしまったら…( ゚д゚)
取り返しのつかないことになります。実際、前脊椎動脈虚血から対麻痺をおこした事例があるそうです。
そのため、動脈管を結紮したりbamdingするときは足背動脈Aラインで血圧が下がらないこと、つまり下行大動脈でないことを確認してから行うようにしているのです。

では。実習に遅刻しそうなのでこれにて。